福岡地方裁判所 昭和44年(ワ)611号 判決
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〔判決理由〕原告双須元治の損害(逸失利益)について判断する。<証拠>によれば、原告元治は本件事故当時「菱栄自動車」という名称で三菱自動車の修理販売業を営んでいたこと、従業員は妻の原告佐智子、母加藤シゲ子を含め九名であり、原告元治と従業員五名が修理関係を、原告佐智子と従業員一名(社家間秀夫)が販売をそれぞれ担当し、他に事務員一名、炊事関係を受け持つ母、加藤シゲ子という構成であつたこと、原告佐智子の販売成績はきわめて優秀であつて販売会社から表彰を受けたほどであつたが、本件事故による受傷のため売上が著しく減少したこと、菱栄自動車全体および原告佐智子分、社家間秀夫分の各新車販売手数料額は別表のとおりであることなどの事実が認められる。
右事実によれば、原告元治の営んでいた右企業は、妻や母をも従業員とし、他の従業員もそれほど多くない、家族的企業であること、原告元治が整理部門を、原告佐智子が販売部門をそれぞれ担当し、実質的には原告両名の共同経営であつたと認められること、原告佐智子の相当するセールス部門は得意先との個人的つながりが重視される業務であつて、代替性が少いこと、原告らは夫婦であり、経済的同一性があると認められることなどから、原告佐智子の売上の減少による収入の減少は原告元治の営む右企業の減収と考えられ、それは本件事故と相当因果関係があると認められる。
原告佐智子の販売成績は、別表のとおり昭和四二年度に比し昭和四三年度、昭和四四年度はかなり減少しているが、かりに同原告が販売活動を中止したとしても、同原告の分の得意先をすべて放棄してしまうとは考えられず、その分は当然他の社家間秀夫か他の従業員がこれを処理すると考えられるので、企業全体としては、原告の活動によつて得ていた利益の金額を失なうことにはならない(ある程度の減少はあるとしても)と考えられ、右別表によつても原告佐智子分の減少とは反対に社家間秀夫分の成績は約六六パーセント上昇していることが認められる。しかし、前記別表のとおり企業全体としては昭和四二年度に比し昭和四三年度に三五二、四三三円昭和四四年に一、一九九、二〇八円それぞれ減少していることが認められ、前掲各証拠によれば、菱栄自動車の業績は年々上昇傾向にあつたことが認められ、右別表によつても、昭和四五年度は八月までにすでに三二八万円余の成績をあげ、同年度の成績が昭和四二年度のそれをはるかに上まわることは明らかであること、他にとくにこのように著しく成績が下る理由が認められないことなどからみて、右減少額は少くとも原告佐智子が本件受傷のため販売活動ができなかつたことによるものと認められる。そこで、右減少額合計一、五五一、六四一円から必要経費二一、九二三円(昭和四二年度の原告佐智子の販売手数料と<証拠>によつて認められる同原告の同年度の必要経費三五、九八〇円の割合によつて計算する。ただし円未満四捨五入)を差引いた一、五二九、七一八円が本件事故による原告元治の損害となる。他に右限度を越える逸失利益を認めるに足る証拠はない。(綱脇和久)